
2025/04/16
コラム
ITコラム ー 業務アプリケーション・IT投資を成功させるための基本ステップ ステップ4
業務アプリケーションIT投資を成功させるための基本ステップ
―業務アプリケーションの取り組み体制と投資プロセスに鍵がある―
IT投資を成功させる取り組みを5つのステップでご紹介させて頂く全6回のITコラム。
日々「IT投資管理」「業務プロセス標準化」「業務アプリの断捨離」などを意識する方だけでなく、技術職や営業職に関わる方にも幅広く知識の一つして頂ければ幸いです。
第5回目、ステップ4のコラムをお届けしたいと思います。今回は「投資効果(投資リターン)」を明快に定義しステークホルダーと共有することがポイントになります。
コラム著者紹介
菅宮徳也

大手電気メーカでIT関連の経験を積み2024年7月よりベストスキップ株式会社にてシニアITコンサルタントとして従事。
✓ 東南アジア向けメインフレーム営業・事業企画
✓ 金融機関向けITシステム活用研究・コンサルティング
✓ 金融機関向けシステムインテグレーション事業企画
✓ 米国ITシェアードサービス拠点設立・運営
✓ グループIT・セキュリティガバナンス
✓ グループ標準アプリ開発・運用
✓ 鉄道車両・信号システム事業部門(本社は欧州)の国内CIO
ステップ4:投資判断に耐える投資計画を策定する(IT投資計画を作る)
(ア) IT投資効果(投資リターン)を定義する際には財務指標を極力定量化することがポイントになります。そして投資成果をコミットし刈取る責任者としてプロセスオーナ(PO)が業務領域単位でIT投資効果(投資リターン)を算出します。
(イ) 財務指標の例としては以下のようなKPIがあげられます。
① P/L項目
・ Loss・・・原価・一般管理費及び販売費削減(生産時間短縮、設計標準化、自動化、会議レス化、システムの退役、人的業務工数削減)
・ Profit・・・売上拡大(受注拡大、製品付加価値増強(例:DX)、高利益率顧客へのシフト)
② B/S項目
・ 資産圧縮(棚卸資産・売掛資産の圧縮)によるC/F改善
(ウ) 非財務指標の例としては
① 法制度対応
② 事業リスク改善(プロジェクト指標可視化・リスク評価、案件進捗状況可視化・リスク評価)
③ 人的資本改善(スキルマップ達成度、採用計画達成度)
(エ) ついで、ステップ2で記載した「退役計画」を立てます。その中では、退役により削減が期待できる運用費・保守費を算出する一方で、異なるアプリへ片寄する場合などの一時経費を算出します。もちろんIT投資効果に含めます。
(オ) ここで、直接的効果(多くの場合財務諸表を直接改善する効果が期待できるもの)と間接的効果(例えば、生産性の向上によって現状人員を増やさずに引き合い増やせるというような効果)を分けどこまでを投資効果として含めるのかを決めます。
(カ) 各POに対して自由に投資提案をさせず、あくまでステップ2で検討したTO-BEシステムマップに沿った計画づくりを前提としてもらいます。ここを外してしまうとサイロ化が進んでしまいます。
(キ) そのために重要なのは予算時期が始まる前に業務領域ごとの投資上限金額、優先的な投資案件、退役計画をIT組織から各POへ「ガイドライン」として提示することです。
(ク) 個々の投資に対するReturn on Investment(ROI)を算出します。正味現在価値を計算することも良いですがもっとシンプルな表現のほうが説得力に富むことが多い印象があります。例えば、累積投資額に対し累積効果額のグラフなどです。
最終的に個々のROIを全社レベルで合算します。これによって全体像が可視化できます。
次回最終回、ステップ5に続きます。