
2025/04/09
コラム
ITコラム ー 業務アプリケーション・IT投資を成功させるための基本ステップ ステップ3
業務アプリケーションIT投資を成功させるための基本ステップ
―業務アプリケーションの取り組み体制と投資プロセスに鍵がある―
IT投資を成功させる取り組みを5つのステップでご紹介させて頂く全6回のITコラム。
日々「IT投資管理」「業務プロセス標準化」「業務アプリの断捨離」などを意識する方だけでなく、技術職や営業職に関わる方にも幅広く知識の一つして頂ければ幸いです。
本日はその4回目、今回はステップ3を解説したいと思います。いよいよ投資管理体制とプロセスを構築するという正念場となってきました。
コラム著者紹介
菅宮徳也

大手電気メーカでIT関連の経験を積み2024年7月よりベストスキップ株式会社にてシニアITコンサルタントとして従事。
✓ 東南アジア向けメインフレーム営業・事業企画
✓ 金融機関向けITシステム活用研究・コンサルティング
✓ 金融機関向けシステムインテグレーション事業企画
✓ 米国ITシェアードサービス拠点設立・運営
✓ グループIT・セキュリティガバナンス
✓ グループ標準アプリ開発・運用
✓ 鉄道車両・信号システム事業部門(本社は欧州)の国内CIO
ステップ3:IT投資管理体制とプロセスを構築する(目標達成に向けた体制とプロセスを作る)
(ア) 経営幹部をステアリングコミッティに配したトップダウンのIT投資意思決定会議体を作ります。
(イ) IT投資成果をコミットし刈取る責任者として業務領域単位にプロセスオーナを選出するProcess Owner(PO)制度を導入します。(理想的には、Chief Business Process Transformation Officerが選出できるとベストですが、筆者の知る限りかつてIBMが採用していた例があるくらいです。)
(ウ) 業務領域単位でPOとIT組織が常時ペアとなって投資を計画・実行・運用する取り組み体制を構築します。(できるだけ上位経営幹部にTOPに座ってもらいリーダーシップを発揮してもらうことがガバナンス上重要になってきます。)
(エ) 投資リターンは、IT投資の結果稼働することになるアプリの利用による業務効果と位置付けます。そのためPOの責任として業務効果を算定し達成をコミットし実際に刈り取ることが投資計画の前提となります。
(オ) 一方で、IT組織は見積りの範囲内の費用と納期で約束したアプリをデリバリーすることが責任となります。
注)
多くの組織において上記分担があいまいな場合が見られます。ひどい場合はIT組織が投資リターンを算出して投資意思決定の場で業務部門に成り代わって説明することがありますが、そうなると投資効果の算出は不正確であり、また稼働後の投資リターンを出すための権限は持ちえない(当然ながらIT組織は業務部門にレポートラインを持たないためアプリ利用を強制できない)ためリターンの刈り取りは困難なものになりがちです。この分担をしっかりできるかどうかが成否をわけることになります。
(カ) 予算編成プロセス・日程と同期したIT投資管理プロセスと推進日程を定義します。できればIT投資以外の投資(設備投資、R&D投資)と連動した経営幹部を含めたIT投資管理日程を策定すると経営幹部としては投資全体像が理解しやすく正しい投資判断に結び付きやすいです。ここでのポイントは二つあります。
① 予算編成が「始まる前に」IT組織がプロセスオーナに対して投資優先順位と投資上限値を提示する(IT投資ガイドラインの提示)
② 予算審議の「途上で」ステアリングコミッティを交えIT投資検討会で審議する(投資内容の大枠決定・成果のコミット)
次回ステップ4に続きます。